新年や、節目の時に誓いを立てますか?
年が明けると「今年こそは!」と意気込む方は多いと思います。
実は、私もそのタイプです。
しかし、「新年の誓い」が本当に達成された方ってどのくらいいらっしゃるのでしょうか? 私の周囲には残念ながら多くはないようです。
今年こそはと決意したはずの「早起き」
元旦からスタートするはずの「ダイエット」
毎年の「今年こそ英語勉強する!」
どうして大半の人が無理なのでしょう?
実はある調査によれば、その目標が達成される可能性はたった8%だそうです。(*1)
実は人間には新しいことを行う時に注意しなくてはいけない幾つかのポイントがあるのです。

1. 私たちは目の前の報酬が欲しい!
次のことを言われた時に、あなたはどう決断しますか?
- A:1年後に10000円もらえる
- B:1年と1日後に11000円もらえる(10%多い)
これは大半の人がBを選ぶでしょう。365日と366日の違いだけです。私も待ちます。
ところがこう言われたらどうでしょう?
- A:今日10000円もらえる
- B:3日後に11000円もらえる
こうなるとAを選ぶ人が増えてきます。すくなくとも前回よりは心に迷いが出るのでは?
比較できる報酬の日程が遠くに設定されていれば冷静に損得を考えられるのに、近くにされると混乱する。このようになぜか人は「目の前ですぐ得られる報酬を過大評価し、そのため結果的に将来に得られる報酬や罰則を過小評価してしまう」という性質があり、行動経済学では「双曲割引」と呼ばれています。(*1)
なぜそう考えてしまうのかは諸説ありますが、「いつ食べ物にありつけるかわからない」という太古の狩猟民族的な思考が脳に残っているからだとも言われています。
「新年の誓い」は、実行され習慣化されなくてはいけないものが大多数です。ところがそれはやってみても、1日や2日では何も変化が見られないものが多い。
だから双曲割引で、1週間や1ヶ月がんばって続けていれば見えてくる未来を過小評価し、すぐに怠惰に流れてしまうわけです。
2. 脳は綿密に計画しただけで達成した感覚になる
さて、前項1. で「すぐには変化がみられないから、綿密に計画すればいいじゃない」と皆さんなるわけです。よく「イメージを明確にすれば現実化する」とばかり、一生懸命具体的な案を書き連ねる方をみかけます。
じつはこれは罠です。
脳は(というか潜在意識は)現実とイメージの区別がつかないと言われます。
そのため古い能力開発のメソッドではゴールやそこに至るプロセスのイメージを明確化させ、「成功者のように考えて振舞えば成功する」という技術で導こうとします。
しかし今、書きました「現実とイメージの区別がつかない」脳はどう動くでしょう?
簡単です。プロセスのイメージさえも明確であればそれを現実と思って安心してしまうのです。成功に対してのやり方がわからない遠い未来に関して動くなんて「双曲割引」の原理からもやらないです。
「モラル・ライセンシング」もそれを手伝います。「意識高く計画したから、少しくらい怠惰でもいいか」という感情です。(*2)
「ダイエットのために運動したから、今日はパフェ食べてもいいよね!」の感覚です。
だめでしょ!
綿密に「新年の誓い」の計画を立てても、まだまだ達成にはハードルがあるわけです。
3. 「恒常性」が変化を邪魔する
追い討ちをかけるように人間には「恒常性」の法則があります。
変化がとても嫌いなのが人間です。「えー!」と思う方もいるかもしれませんが、言い方を変えれば「ブレない私」が好きなのです。これだと受け入れられますか?笑
言うことが毎日違う上司がいたら大変じゃないですか?そしてあなたも毎日目に入るものや情報で心が揺れていたら大変です。ある意味「恒常性」は生き抜くためにとても重要なものなのです。
しかしそれは一方で変化を大きく拒みます。
ではどうすればいいの?
さてさて、非常に悲観的なことを書いてきました。
では「新年の誓い」は達成できないのか?
方法はあります。
「目の前の報酬」で「綿密に計画せず」、本来の「恒常性」に気づかせないようにすればいいのです。
そうです。まずは小さなアクションの習慣化です。
- ダイエットのために朝一杯の水を飲む
- 朝起きてすぐ二度寝しない
- 夜、寝る時間を決める
その小さな動きに「新年の誓い」や「目標」につながる、また小さなアクションを繋げていくのです。
- 朝一杯の水を飲んだら、とにかく外を10分歩く
- 朝起きたら、◯◯をしてから、二度寝する(だいたいできない)
- 夜、寝る時間を決めて、寝る前にストレッチングして寝る
決断や目標はとても大切です。しかし多くの本や情報がそこまでの障害や小さなステップの組み立て方を教えてないのが現状と個人的には思っています。
参考
*1 「僕たちは習慣で、できている」佐々木典士著 ワニブックス
*2 「良いことをすると悪いことをしたくなるモラル・ライセンシング効果とはなにか?」https://jmatsuzaki.com/archives/19610